読みもの

短編小説冒頭抜粋

帰るところ

ある雨の日のことだった。

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140字の物語

Xで発表した5作品を全文掲載しています。140字小説・超短編小説とも呼ばれる形式です。

覆面バンドのギターを担当していた。出した曲は売れに売れた。けれど人気絶頂の中、まさかの余命宣告を受けた。今は別のギタリストが僕の仮面を被って演奏している。ファンは誰一人気づかなかった。静かすぎる病室でスマホを眺める夜。しつこかったアンチの一人が、弾き方が違うとネットに書いていた。

「別れたい時は一ヶ月以上前に報告してね」「会社かよ」変な彼女だ。心の準備が要るらしい。笑い飛ばしていたのに、他に好きな人ができてしまった。二年目の冬。別れようと言ってから、僕らは懐かしい場所を巡った。大切な話もした。一ヶ月後、彼女はさよならと手を振った。僕とは違い吹っ切れた顔で。

初デートでファミレスに行ったら振られた。金銭感覚が合うか試したかったが、やはり駄目か。「はあ。結局カネか」僕の呟きに、職場の後輩はムッとしていた。「人によりますよ。試しに私とデートしてみますか?」疑う僕は再びファミレスに連れていった。後輩は言った。「普通に話がつまんなかったです」

『あと少しで家に着く』彼からのLINEを受け取り、私は料理の手を止めた。今日はスイーツが欲しい気分だ。『プリン買ってきて。かための』そうメッセージを送ると、すぐに返事が来た。『もう玄関の前だわ。付き合いたての頃なら、戻って買ってたかも笑』帰宅した彼はプリンが入ったレジ袋を持っていた。

「絶対開けないでね」彼女は僕に封筒を渡して言った。「私のどこが好きか分からなくなるまで」春、彼女は地元を離れた。お互い初めての遠距離恋愛。新鮮だった夜の通話は、すぐ物足りなくなった。僕は冬が来る前にあの封筒を開けた。中のカードにはこう書かれていた。『最後は会ってさよならをしよう』

ことばであそぶしおりぐまの140字編集室

ガチャを回して、あなただけのふしぎな物語。